第2話 ゼネコンのやまさん
EPISODE 2
第2話 ゼネコンのやまさん
会社には社風というものがあるらしい
お酒の飲み方も然り
取り分け社用で利用することの多い銀座では
それはより顕著に現れる
長いことお客様を見ていると流石に社名までは分からないものの
飲み方でどんな業界かぐらいはおおよその検討がつく
ヤマさんはゼネコン業界
潔い飲み方は業界の典型だ
ウイスキー好きだがあれこれと指定はしない
「マスター、旨いのくれ」といった注文だ
任せるからとにかく旨いウイスキーを旨い飲み方で出してくれ
という意味である
蘊蓄を並べるのは嫌いだし
何が何でも旨い酒を呑みたく来店するのだ
ヤマさんのお気に入りはこの店のカツサンドとコンビーフサンド
カツサンドは岩手花巻白金豚のロースカツを
トーストした食パンにバターと辛子を塗り
たっぷりのソースとキャベツで挟んだものだ
コンビーフサンドはノザキのコンビーフをホットサンドにしたシンプルなもの
いつもヤマさんはウイスキーを飲みながら
幸せそうにそれらを摘まんでいる
「マスター、今日も旨いのを頼むな」
せっかちなヤマさんは「早くくれ!」と言わんばかりだ
「今日はこのお酒とこれを食べてみてください」
「これは何だ?バーボンか?」
「Four Roses Platinum(フォアローゼス プラチナ)のロックに
カレーチリコンカンサンドです」
「カレーのサンドイッチとは珍しいね」
「バーボンウイスキーに合うかと」
ヤマさんはサンドイッチをガブリとかじりバーボンをグビッと呑んだ
「何だか分かんないけどカレーとバーボンは合うぞ!」
「こりゃ旨い!そう言えば昔、西部劇でチリコンカンをアルミの器で食べてたな
あれ見てて旨そうだと思ってた」
ヤマさんはそう言って一人で笑った
ジョンデンバーのCountry Road ♪が流れた