銀座の路地裏の雑居ビル

第3話 銀座のクラブ

EPISODE 3

第3話 銀座のクラブ

器量の良い女性達が華やかに着飾り
お酌をし、話し相手をしてくれる。
世の男性ならば一度は訪れたい所である。
「座って幾ら」などと言われるが、それは基本料金みたいなもので
酒代以外の氷やミネラルウォーター等のセット代金に
テーブルチャージ・シートチャージ他様々なサービス料がプラスされ
飲食代金として請求される。
よくテレビドラマで見かける豪華フルーツ盛り合わせは
当然、高額な別料金だ。

「あの店は座って片手かな」と言えば5万円が基本料金で
ボトルを入れるとそのボトル代金が加算される。
興が乗りホステスさんの杯も進めばボトルは更にもう1本となり
ホステスさんも更にもう1人2人と座ってくれる。

引き際を逃したことを後悔しても時すでに遅し。
後は開き直って楽しむか、深手を負う前に退散するか。
“う~ん、懐と相談だ”などと細かいことを考える庶民派はあまり居ない。

銀座のクラブを訪れる目的は多種多様だ。
とにかく高額な料金に見合うサービスを提供してくれるのだから
その魅力と奥深さは計り知れない。
一度や二度訪れただけでそれらの価値を見出すことは難しく
馴染みの客ともなると楽しさは多いに増すのだ。
銀座で酒を飲む事で自分の成功を嚙み締めている人も少なくないだろう。
そこには最高の酒があり、最高のサービスがあり
自分の成功を称え、時に支えてくれる美しい女性達がいるのだ。

銀座のクラブの歴史を辿っていくと
1924年開店の「カフェタイガー」に辿り着く。

1923年の関東大震災直後で時代はまだ大正であった。
当時、永井荷風・菊池寛など文壇の客が贔屓にしていたのは有名な話だ。
カフェタイガーは給仕する女給の
「美しさと濃厚なサービス」が売りだったというから
時の男子諸君でなくとも想像は膨らんでしまう。

それから約一世紀。夜の銀座の歴史は
女性達の美しさと逞しさが支えてきたと言っていい。

深夜0時を回る頃、店のお勤めを終えたホステスさんが
店外でお客様とお付き合いをする俗に「アフター」と呼ばれる慣習がある。
お客にとっては河岸を変えてもう少し楽しい時を過ごしたい。
ホステスにとってはお客様との距離を縮める絶好のチャンスなのだ。

おっと!かもめ亭にもアフターのお客がご来店。
花もないかもめ亭が深夜は少し華やかになる。
ほろ酔い気分のホステスさん
今宵は季節のフルーツを使ったカクテルでも如何ですか?
今日は巨峰がお薦めのようですよ。
スティングの♪Englishman in New York♪でも聴きながら…

ピンク色のフルーツカクテル

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