バーの音 第一話

バーを作る時に音楽(BGM)をどうするか考えます。 
もちろん無しという選択肢もあり、現に無音のバーも存在します。
氷の音、グラスにバースプーンが触れる音、シェーカーの音などがBGMとなるようです。
私が修行をしたモンドバーではジャズがBGMでした。
当時の店長はジャズの評論家として、雑誌に連載をもっている人でもあり、プロのバーテンダーとしての知識、技術も持ちながら、ジャズにも精通していました。
店長が作成したバーBGM用ジャズナンバー集のカセットテープがモンドバーのBGMでした。
私にとってはお客様の会話や笑い声、氷やシェーカーの音、そしてジャズが酒場の音になったようです。

横浜には古いバーがたくさんありました。
ウィンドジャマー、アテネ、コペンハーゲン、ケーブルカー、クライスラー、シーメンズクラブetc
扉を開けた瞬間、異国へ旅に来たような、それぞれの独特な内装と空間、そして音楽。
岩手の田舎から出てきた私にとって東京もさることながら横浜は異国も異国。驚きとときめきの街でした。
ウィンドジャマーはバンドの生演奏、1950年創業のクライスラーには古いジュークボックス。
残念ながら閉店してしまったお店も多いですが、そんな古き良き横浜の記憶は自分の店づくりに大きく影響していると思います。

写真は昭和63年1月20日 柴田書店より発行
日本最初のバーガイドと言われた、"ザ・バーブック"より

第二話へ続く